名古屋高等裁判所金沢支部 昭和52年(ラ)12号 決定 1977年6月11日
抗告人(事件本人)
甲野花子
右抗告代理人
林又平
主文
本件抗告を棄却する。
理由
一本件抗告の趣旨および理由は、別紙抗告状写のとおりであるが、その理由は要するに抗告人は心神耗弱者ではなく準禁治産宣告は相当性を欠き、かつ山田一郎は保佐人として適任ではないというにある。
二よつて検討するに、本件記録によれば抗告人が心神耗弱者にあたるとして同人を準禁治産者とした原審判決は相当であり、かつ、原審判決には他に何ら違法の点がないから本件抗告は失当である。
なお、抗告人山田一郎が保佐人として不適格である旨主張するが、そもそも保佐人選任の審判に対しては即時抗告をなすことができる旨の規定が存しないから、家事審判規則第三〇条によつて準用される同規則第二五条により準禁治産の宣告とともに保佐人選任の審判がなされた場合であつても、保佐人選任の審判に対しては独立して即時抗告をなすことはできないものと解するのが相当である。そして本件のように準禁治産宣告と保佐人選任の審判が同時になされた審判に対し即時抗告がなされた場合、抗告裁判所としてはもし準禁治産宣告を取消すべきときは保佐人選任部分を含めて原審判全部を取消すべきであるが、原審判中準禁治産宣告部分が正当であるときには保佐人選任部分についてはその当否を審査できないものといわなければならない。そう解しなければ保佐人選任の審判に対し独立して即時抗告を認めない法規の趣旨に反するからである。原裁判所のなした抗告人を準禁治産者とする旨の審判が正当であることは前記のとおりであるから、保佐人選任審判については判断を要しない。
三よつて、本件抗告を棄却することとし、主文のとおり決定する。
(西岡悌次 富川秀秋 西田美昭)
抗告状<省略>